エネルギー環境教育の教材紹介・活用実践例

地球はおかしくなっているの?

 ホタテガイの大量へい死、大雪によるりんご果樹の被害―。青森県においても異常気象による実害が発生している。12月17日発行のエネルギー環境教育ポスター「エネルギーClub」(日本教育新聞社発行)は、地球温暖化を始め、世界的な環境問題についてマンガで紹介を行っている。同ポスターを活用した授業展開について、八戸市立轟木小学校の久慈寛之教諭に指導案としてまとめていただいた。

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《授業展開例》
青森県の異常気象から考える地球環境
八戸市立轟木小学校 久慈 寛之 教諭

〈導入〉―身近な自然環境の変化を知ろう―

 漫画の3コマ目までを提示し、「八戸の猛暑日」「陸奥湾のホタテの死滅」「大雪によるりんご被害」について知っていることを発表し合い、解説を読むことによって異常気象が原因であることを確かめる。そして、身近な自然環境の変化について話し合う。(例:昔は田んぼに水を入れて凍らせ、天然のスケートリンクを作っていたが、今は気温が高くて凍らせることができない。急激な気温の変化の影響で、作物の実入りが悪い。など。)

〈展開〉―地球温暖化の原因とこれまでの取り組みを知ろう―

 漫画の4・5コマ目から、異常気象の原因の一つに地球温暖化が挙げられることを確かめ、単に平均気温の上昇だけではなく、寒暖の差の大きな広がりに影響していることにもふれる。そして京都議定書などを例にとり、二酸化炭素などの温室効果ガスを減らすことの必要性を議論しながらも大きな成果を上げていないという現状を伝える。

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〈まとめ〉―CO2の増加を抑えるためにできることを考えよう―

 漫画の6・7・8コマ目から、火力発電に頼っていてCO2の発生が増えている現状を知る。グラフを用いて震災後に火力発電の比重が増えたことにもふれる。理科「電気の利用」で学習した発電の仕組みを想起させて、蒸気でタービンを回す火力発電では、CO2が発生することを理解させるとともに、省エネルギーなど自分たちにできることを考えさせる。(火力発電実験キットがあれば活用したい)

【小学校 総合的な学習の時間】

1 想定学年:小学校6年生
2 教科:理科から発展させた総合的な学習の時間
3 授業単元名:人と環境~地球はおかしくなっているの?~(2時間)
4 テーマ:青森県の異常気象から考える地球環境

授業展開の主旨

 昨今の身近な自然環境の異変に着目させ,その原因の一つが地球温暖化であることに気づかせることによって、CO2を削減する必要感をもたせる。そして、省エネルギーなど自分たちが生活の中でできることを考えさせる。

青森県内のエネルギー・環境教育の情報を提供
教材作りに「WebエネルギーClub」の活用を

 青森県内のエネルギー環境教育情報サイト「エネルギーClub」では、日本教育新聞社が年2回発行しているポスター「エネルギーClub」のバックナンバーを掲載中。ポスターを授業に活用する際の指導案も添えられていて、2012年7月16日号では、弘前市が取り組んでいるスマートコミュニティのしくみについてイラストを使い、わかりやすく解説している。
 そのほか、県内のエネルギー関連施設を県全図の中に網羅した「青森県は日本が誇るエネルギーの宝庫!」や、家庭や学校にある身近なものを使ったエネルギー実験を紹介した「おもしろ実験に挑戦!」など、さまざまなテーマが揃っている。紙面にはテーマに沿った問題が設定され、ダウンロードしてプリントすれば、そのまま教材として活用できる。
 また、エネルギー環境教育に関するシンポジウムや実践事例なども掲載されているほか、弘前大学や八戸工業大学のサイトへもアクセスでき、使い勝手のよい仕様になっている。

地球はおかしくなっているの?
「エネルギーClub」教師用解説

 いま、地球のあちこちで、異常高温、干ばつ、洪水などの異常気象による甚大な被害が発生している。このような現象は地球温暖化が原因だと言われており、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によれば温暖化の進行とともに、極端な高温や熱波が増加する可能性が高いとされている。青森県の農水産物に悪影響を与えている異常気象について考察する。

1990年代以降、青森にも温暖化の傾向が

 アメリカ海洋大気局(NOAA)の調べによれば、2012年5月~6月の地球の陸地の平均気温は統計の残っている1880年以降の同時期としては過去最高を記録し、「世界で一番暑い初夏」だった。日本もまた同年は夏期間全体(6~8月)を通して、「戦後3番目に暑い夏」だった。長期的な傾向を見ると、世界の年平均地上気温は100年あたり、約0・68%の割合で上昇しており、日本の年平均地上気温は100年あたり、約1・15%の割合で上昇している。青森の年平均地上気温も100年あたり、約1・8%の割合で上昇しており、特に1990年以降は高温傾向が顕著に見られる。
 八戸市では最高気温35℃以上の真夏日を記録した年は、2010年の3日をトップに、2日を記録したのが2012年、2004年、1999年、1997年、1994年、1971年であった。青森市でも最高気温35℃以上の真夏日を2日記録した年は2012年、1994年となっている。

※「青森県の年平均地上気温の推移グラフ」青森地方気象台HPより

農水産物に悪影響を与えた異常高温や豪雪

 2010年夏は、海水温の上昇によってホタテガイの生理に影響を及ぼすと言われる23℃を超える日数が55日、過去に観測されなかった26℃を超えた日が11日もあった。こうした高水温が陸奥湾のホタテガイに大きな被害を与え、稚貝の約7割がへい死した。
 2012年夏も高水温による悪影響が見られ、陸奥湾全体では稚貝のへい死率が24・3%に及び、大きな被害が生じている。
 また、冬の豪雪も農作物に影響を与えている。2011年12月後半から2012年2月初めにかけてシベリア高気圧の勢力が強く、冬型の気圧配置が強まり、北日本から西日本にかけて日本海側は記録的な豪雪であった。青森県も2012年2月28日には最高積雪深166㎝を記録。雪は4月中旬まで残り、特に東青地域のリンゴ果樹は雪害により多くの損傷を受けたが、修復作業や栽培管理に努めた。その甲斐あって、何とか平年に近い収穫を上げることができた。

2012年9月~10月、陸奥湾で観測された青森ブイ15m 層の日平均水温の推移(℃)。9月中旬は26℃を超える日が続き、 9月19日と9月20日は26.7℃を記録した。

※地方独立行政法人青森県産業技術センター 水産総合研究所調べ

家庭のCO2排出量は年々増加している

 工場などの産業部門は省エネや技術の進歩などによって、CO2排出量は年々減少しているが、家庭部門においては1990年度に比べると2010年度は34・8%も増加している(「日本の部門別二酸化炭素排出量の推移」グラフ参照)。家庭から排出されるCO2を燃料種別で見てみると「電気から」が43・4%あり、「ガソリンから」の26・3%、「都市ガスから」の8・5%を抜いて断然トップを占めている(「2010年度家庭からの二酸化炭素排出量」【燃料種別内訳】のグラフ参照)。次に用途別で見てみると「照明、家電製品などから」が31・5%あり、「自動車から」の27・0%を抜いてやはり1位は電気である(「2010年度家庭からの二酸化炭素排出量」【用途別内訳】のグラフ参照)。
 家庭における節電、省エネは、CO2の排出抑制に大きく寄与し、地球温暖化防止の切り札と言えるだろう。

「2010年度家庭からの二酸化炭素排出量」(用途別内訳)
「2010年度家庭からの二酸化炭素排出量」(燃料種別内訳)
2つの円グラフの出典/温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

■出典・参考データ/青森県農林水産部HP、青森県農林水産部報道発表資料、青森地方気象台HP、気象庁地球環境・海洋部気候情報科報道発表資料、地方独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所「積雪深の観測データ」、地方独立行政法人青森県産業技術センター 水産総合研究所「陸奥湾の水温、青森ブイ15m層のデータ」ほか

出前講座で地球温暖化を学ぼう

青森地方気象台

 青森地方気象台では、防災・気象知識の普及啓発と防災情報の利用促進を図り、気象業務への理解を深めるために、職員を講師として派遣する「出前講座」を行っている。「天気予報」「台風」「大雨と災害」「気象観測」「地域の気象特性」「気候変動」「地震・津波・火山」等、気象台の業務に関連したさまざまな学習テーマに答えてくれるという。
 たとえば「温室効果と地球温暖化」の講座では、地球温暖化の基礎知識、地球温暖化問題に対する気象庁の取り組み、地球温暖化に伴う日本の気候の変化などを解説し、いま、私たちにできることについても詳しい説明をしてくれる。
 また、「青森県に暴風をもたらす台風・低気圧」の講座では、暴風、高波の主な要因、ここ数年間で青森県に被害をもたらした台風と今年の台風の発生状況や、ここ数年間で青森県に暴風をもたらした低気圧の例を紹介。
 「気象情報から知る山岳気象」の講座では、八甲田山遭難事故当時の天気経過や悪天候による遭難を防ぐためにどうすればよいかを教えてくれるという。

■問合せ・申込み先=青森地方気象台総務課
電話:017-741-7412 FAX:017-741-7007

教員授業用資料

青森県版タブ表面 (PDFが表示されます)
青森県版タブ裏面 (PDFが表示されます)