青森県で最新の津軽ダムが誕生 !!

青森県で最新の津軽ダムが誕生 !!

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青森県で最新の津軽ダムが誕生 !!

画像提供/津軽ダム工事事務所

 5月から青森県で最新の水力発電所・津軽発電所が運転を開始しました。県内にはおもな水力発電所が24か所(※1)あり、最大出力(※2)8,500kWの津軽発電所は、十和田発電所(31,100kW)、浅瀬石川発電所(17,100kW)、大池第二発電所(10,700kW)、立石発電所(10,500kW)に続く、5番目に大きな水力発電所として電力を供給しています。
 今回は青森県の水力発電についてさぐっていきます。
(※1=2016年5月末現在)
(※2=最大出力(kW)とはここまで電気を起こせるという発電能力のことです。数字は認可最大出力(kW)。東北電力(株)青森支店調べ)

画像提供/東北電力

水力発電の分け方はほかにもあります。

 ポスターでは発電方式による分類方法(水路式、ダム式、ダム水路式)を解説しました。別の分け方として、発電所の運用上の特性による分類方法もあります。

[ a) 自流式(流れ込み式)発電所 ]

立石発電所や岩谷沢発電所などのように、河川の流量をそのまま利用するもの。

[ b) 貯水式発電所 ]

津軽発電所や浅瀬石川発電所などのように、季節間の変動に対応するため豊水期に水を確保し、渇水期でも安定した発電ができるだけの水量を貯めておくもの。

[ c) 調整池式発電所 ]

滝渕発電所や一の渡発電所などのように、日間・週間の変動に対応するため、軽負荷時に出力を落として貯水し、重負荷時の発電運転に備えるもの。

そのほか、目的別分類という分け方もあります。

[ 1) 東北電力が直接管理運営する水力発電所 (18か所) ]

岩谷沢発電所 嘉瀬子内発電所 上松沢発電所 大不動発電所 寒水沢発電所 矢別発電所 十和田発電所 蔦発電所 立石発電所 法量発電所 小中島発電所 浅瀬石川発電所 一の渡発電所 滝渕発電所 大池第一発電所 大池第二発電所 松神発電所 津軽発電所

[ 2) 東北電力に電力を供給するための水力発電所 (1か所) ]

駒込発電所

[ 3) 民間企業などが自家発電用に発電し、電力が余れば東北電力に供給している水力発電所 (5か所) ]

川内ダム管理用発電所(※) 下湯ダム発電所(※) 津軽広域水道企業団水力発電所 吉井酒造岩木川発電所 世増ダム管理用発電所(※)
(260kW以上の水力発電設備。※印は青森県が管理しているもの)

(発電施設の数字は青森県、東北電力(株)青森支店調べ)

時代とともに増加する青森県の消費電力量

 棒グラフが示す「青森県の総発受電量」とは、県内で発電した電力量と県外で発電して青森県が使用した電力量の合計です。60年以上前の総発受電量と最近の数字を比べると約15倍も増加し、時代の推移とともに電気機器をたくさん使うようになったことがわかります。2010年度は東通原子力発電所による発電量が90%以上を占め、県外からの受電は約2%でしたが、2011年度以後は、電力の約90%を他県に頼るようになりました。
 一方で、水力発電量が占める割合はほぼ横ばいです。青森県だけでなく日本全体として水力発電のための大規模な開発はひと通り終わり、今後は大がかりな水力発電から、河川の小さな落差を利用して数百kW程度の小規模な水力発電が開発されるだろうと見込まれています。
 また、水力発電は発電能力が高くても天候を相手にしているため、雨や雪の多い年と少ない年では発電量に差が生じます。季節によっても発電量は異なります。県内では、春は雪どけ水によって流量が多くなるため発電量は多くなり、冬は河川が凍って流量が減少するため発電量も少なくなる傾向にあります。

青森県の総発受電量と発電量の移り変わり

水力発電所の数と最大出力の移り変わり

 「青森県内の水力発電所数と最大出力の推移」の表は青森県における1951年度から2014年度(※津軽発電所は建設中)までの水力発電所の数と最大出力の推移です。最大出力は個々の水力発電所ごとの最大出力の合計となっています。
 浅瀬石川発電所のように、ダム建設にともない数個の発電所(取水設備)が水没することにより廃止され、新しく1個の発電所を建設することもあり、発電所の数と最大出力は比例しません。また、水力発電所は立地条件や設備によって最大出力が制限されます。

青森県内の水力発電所数と最大出力の推移

岩木川は津軽の「母なる川」

 津軽発電所の水源である岩木川は、青森県を流れる最大規模の河川であり、津軽平野の「母なる川」として流域の人々にとって大切な河川です。上流域には世界自然遺産に登録されている白神山地がそびえ、その面積の23パーセントは岩木川流域に位置しています。  しかし、白神山地の急峻な地形のため、大雨や雪どけ水によって発生した水が一気に岩木川に集まり、津軽平野に流れ込んでたびたび大きな洪水被害を与えることがありました。一方で、天候によっては水不足になることも珍しくなく、穀倉地帯であり、リンゴ栽培も盛んな津軽平野には農業用水の安定的な確保が求められていました。  こうした要請を受け、1960年3月、当時の青森県では最大の多目的ダムである目屋ダムが完成しました。多目的ダムとは、2つ以上の機能を持つダムのことで、目屋ダムは「洪水調節」「かんがい用水の補給」「発電」の 3つの目的で建設され、そのとき誕生したのが津軽発電所の前身となる岩木川第一発電所でした。

目屋ダムから津軽ダムへ

 目屋ダムの完成から55年の間、当初の計画(計画高水流量/毎秒500トンを上回る洪水)を超える洪水が25回も発生し、何度も家屋や田畑が被害に見舞われ、りんご園にも大きな打撃を与えました。その反面、2年に1回の割合で水不足が発生。農業用水や水道用水の給水制限が敷かれ、真夏にプールを休業するなど、治水・利水の両面から抜本的な対策が求められ、津軽ダムが建設されることになりました。
 津軽ダムは目屋ダムの直下流60mに再開発事業として建設し、「洪水調節」「かんがい用水の補給」「発電」に加え、「水道用水の供給」「工業用水の供給」「流水の正常な機能を維持するための流量の確保」という6つの目的を持つ多目的ダムです。1991年に建設に着手、2008年ダム本体工事着手、2010年ダム本体コンクリート打設が完了し、2016年度の完成を目指して6月末現在は本体工事を完成させ、貯水池周辺整備工事を進めています。

イラストの出典:津軽ダム工事事務所ホームページ

水力発電のメリット・デメリット

 ポスターで紹介したように、水力発電は発電時に廃棄物や二酸化炭素などの排出ガスを出さない、雨水などを利用するので海外から原料を輸入しなくていい、急な電力需要に応えられるなどのメリットがある一方、大きなダムを建設するときに水没する家や田畑が発生します。また、水力発電所を建設する最適地は一般的に山間部であり、山奥に建てるため自然環境に影響を与える、建設時に大きなエネルギーを使う、都会から離れた場所に作るため送電時にむだが出てしまうといったデメリットもあります。
 前述にもあるように大がかりな開発が望めないため、水力発電だけでは日本全体の総発電量の10%にも満たない現状です。

望ましいエネルギー・ミックスを目指して

 エネルギー・ミックスとは発電方法の特徴を生かして、水力、火力、原子力、太陽光や風力などさまざまな電源をバランスよく組み合わせることを言います。2015年7月、経済産業省が発表した「長期エネルギー需給見通し」の中で2030年度におけるエネルギー・ミックス案を打ち出しました。総発電電力量を10,650億のkWh程度とした場合、原子力20~22%、石炭火力26%、天然ガス火力27%、石油火力3%、水力、風力、太陽光などの再生可能エネルギー22~24%の割合にしようという方向性です(2030年度電源構成の右の棒グラフ参照)。
 化石燃料に乏しい日本が、地球環境にやさしく、安全で経済的に電気を安定供給するためにはどうしたらよいかを考える一方、私たちひとりひとりが日々の節電に努めることも不可欠な要素と言えるでしょう。

グラフの出典:経済産業省ホームページページ

《参考資料》

《参考資料》

●「あおい森のエネルギー物語~先生のためのエネルギー読本~(小学校版)」(北海道・東北地区エネルギー教育推進会議 発行)、経済産業省HP、水力ドットコムHP、津軽ダム工事事務所HP、東北電力HP、「みんなのくらしをささえているあおもり県の電気」平成28年度版教師用(青森県エネルギー総合対策局原子力立地対策課 編集・発行)

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